第33回サロマ湖ウルトラマラソンの完走記の続きです。
前回はスタートから大エイドまでの、想定外の暑さに苦しんだ前半戦を書きました。
天気予報では曇りでしたが、前半はスタートから快晴。
強い日差しが容赦なく体力と気力を奪っていきました。
そして完走どころか、熱中症や胃腸のトラブルでリタイアもありそうだと考え始めた30km以降。
42.195kmはサブ4ペースで通過するも、大エイド手前の坂で遂に歩き始めてしまいました。
その続きを書きたいと思います。
54km地点の大エイド
何度も心が折れかかりましたが、なんとか大エイドまでたどり着きました。
これはもう本当になんとかたどり着いたというレベルです。
ここから先も頑張ろうということは考えられず、まだ半分しかきていないのに体のダメージが相当あるという事実に正直やる気を失っていました。
しばらくここで休もう。木陰で休めば体力も気力も回復するだろうと考えていました。
大エイドでも止まっちゃいけないと井上慎吾コーチからウルトラマラソンの講習会で教わっていましたが、あまりの辛さに腰をおろしていました。
そして、そこで小学校5年生の娘からもらっていた手紙を開くことに。
辛くなった時に読んでねと渡された、几帳面に4つ折りになっている手紙を開くと、予想外の言葉に心が揺れました。
「あいつなんてこと書きやがる。。。」
すぐさま手紙をポケットにしまい、腰をあげました。
絶対に完走だ。
どんな状態でも完走を目指そう。
まずはワッカだ。ワッカを目指そう。
心がやる気を取り戻したおかげで、だいぶ冷静にこの後のレースのことを考えることができるようになりました。
このままいくとワッカでは歩きが多くなるかもしれない。
天気予報では北風が強くなりそうだし、ワッカの寒さに去年はだいぶ苦しめられたので、レインウェアを持っていこうと考えました。
たったの数百グラムの荷物を削らないといけないほどのアスリートか、オレ?
60km〜80km
大エイドを出るとすぐにまた長い上り坂が現れます。
少し走りましたが、やはり胃腸がだるく、体に力が入らない状況です。
そのためまたここで歩きました。
でもここはもう歩こうと決めて歩いたのでポジティブに考え、上り坂は体力温存だと自分に言い聞かせた感じです。
上り坂が終わると、そこからは徐々に体が動くようになってきました。
そして60km過ぎの魔女の森に差し掛かります。
森の木陰に入り、涼しい空気が心地よく、キロ7分前後で走れるくらいに復活してきました。
あれ?なんか復活してきた。
周りのランナーに声をかけたり、沿道の声援に応えたりすることができるようになってきました。
魔女の森では魔女のコスプレをした方々が応援してくれていたり、施設エイドでコーラを飲ませてくれる方々がいました。
「すみませーん。復活の呪文をおねがいしまーす!」
「ありませーん。」
魔女の魔法が効いたのか、コーラのカフェインが効いたのかわかりませんが、この魔女の森をきっかけにそのあと80km地点まではキロ6分30秒くらいのペースに復活しました。
ウルトラマラソンで良く言われるのが、一度失速しても諦めないこと、粘っていれば必ず復活するからということです。
これか、これが例のやつなのか、なんとかゴールまで走れますようにと半ば祈る思いで、昨年低体温症でストップしてしまった因縁のワッカを目指しました。
80km〜ゴール
ワッカの直前の森に入りました。
この森は上り坂になっていて、この坂を越えるとワッカです。
ワッカを折り返してゴールに向かうランナーにワッカの様子を聞いてみました。
するとやはりかなり風が強く、寒さを感じると思うということでした。
ワッカにつくと、凄まじい風が吹いていました。
かぶり水でびしょ濡れのウェアにその風が容赦なく当たると猛烈な寒さを感じました。
すぐにレインウェアを着込みました。
風よけとしての効果を十分に発揮してくれて、かなりの暖かさを感じます。
ああぁ、これがあれば大丈夫だ。
このとき本当に安心しました。
これでなんとか完走できる。
キロ6分で走れればまだ10時間30分を切れるかもしれない。
そう思い脚を進めるとぽつりぽつりと雨が落ちてきました。
その雨はすぐに土砂降りに変わりました。
風も一向に収まらず、暴風雨と化していました。
そんななかワッカのところどころに設置されている救護地点に銀色のエマジェンシーシートにくるまれて震えるランナーたちが目につくようになってきました。
かなりの人が低体温症でリタイアしています。
まるで昨年と同じ光景でした。ワッカの荒れ狂う天候が容赦なくランナーたちに襲いかかっていました。
救護の車がなかなかやってこないようで、リタイアしているランナーの体調が本当に心配になります。
去年と同じだ。
去年の自分はそっち側だった。
今年は寒さを感じることもなく、気分も良く走れている。
大丈夫だ。
いける。
ワッカの向かい風が想像を絶する勢いだった折返し地点
86km地点のエイドにつくと、ボランティアのスタッフたちが口々に
これは災害レベルの雨だな
と言っていたので、冷静に考えても凄まじい天候であったのだと思います。
ワッカに入ったときにはなかった水たまりが、あっという間にワッカのそこら中に出来、足元から体を冷やすようになりました。
ここのエイドで去年はリタイアを宣言し、救護の車にのせていただいた。
その86km地点にようやくたどり着いた安心感があって、気持ちもあがってきた。
折り返し地点まで約3km。ゴールまであと14km。
大エイドで読んだ娘からの手紙に思いをはせる。
手紙。。。
「完走しなくてもいいから、
去年の86km超せれるように、
がんばってね!
おうえんしているよ!」
なんてことを手紙に書いてくれてるんだ!
去年の記録をこすということは、もうそりゃ完走するしかないじゃんかよ!
事情もよく知らない娘が優しさで書いた手紙なんだろうけど、これ以上のエールがあるだろうか。
気分も良く、折り返し地点を目指す。
しかしすごい向かい風。
風で飛ばされてしまうんじゃないかと身の危険を感じるほどの強風。
この向かい風ってことは、折り返せばきっと強烈な追い風になってくれるはず。
もう少し、がんばれ。
向かい風に脚や体の体力を確実に奪われていっている感じはありましたが、なんとか折り返し。
折り返すと、これが本当にすごい追い風。
体を前に前に進めてくれます。
これでゴールまであと10km。
ゴールが見えてきた。
なんとか完走できそうだ。
このままのペースでいければ、10時間30分切れるかもしれない。
遅くても11時間は切れそうだ。
逸る気持ちで先を急ぐ。
途中何人かの仲間とすれ違う。
「折り返せば楽になるからがんばれ!!」
と声をかける。
みんなも頑張っている。自分だけじゃない。
そういう小さなことが結構な力になる。
声をかける、声をかけてもらう。
そうすると少しだけ元気になる。
これはマラソンをやって初めて知ったこと。
応援は本当に力になる。
ワッカを抜け、ゴールを目指す
ワッカを折り返してから、ワッカを抜けるまで追い風になったとはいえ、かなり辛い。
脚が重い。
アップダウンがかなりあるので、坂道では歩いてしまう。
折り返してからのワッカが長いよね。
とはレース後に仲間と語り合った共通事項。
なぜだか行きより帰りのほうが長く感じました。
そしてようやくワッカ入り口の森が見えてきました。
これを抜ければもう少しでゴールだ。
そう考えた矢先になぜか体がフラッときてしまった。
なんだろう。
力が全然でない。
走るどころか歩くのもしんどい。
両手を膝に当て、道の真中で立ち止まりうなだれる。
なんだろう。
歩くとフラフラする。
何人かのランナーが通り過ぎながら、声をかけてくれるが全く反応できない。
なんだろう。
どうしたんだ?
これはハンガーノック?エネルギーが切れた?
ワッカでの寒さと風でエネルギーを消耗して、ワッカが終わるというところでその緊張の糸が切れたのか?
胃の調子が悪いから、ワッカのエイドで何も補給を取らなかった。
お茶を飲んだだけだ。
きっとそのせいだ。
残り20kmくらいいけると過信していたかもしれません。
完全にエネルギーが切れた感じで、自分の体じゃないように力が湧いてこない。
でもたしか、ワッカの入り口にはエイドがあったはず。
そこまで頑張って歩こう。
そうすればなにか食べられるかもしれない。
そこで少し休憩すれば復活できるかもしれない。
でももしかしたらすでに関門時間が過ぎていて、エイドが撤収されているかもしれない。
そう考えながらフラフラとエイドまで1kmほどを歩く。
長い長い1km。
森を抜け、下り坂。
森の入口にあった関門が撤収されていました。
やはりもうないのか。
そう諦めかけた時、その先にエイドがまだありました。
地元の中学生(?)らしき子どもたちが雨の中まだ撤収しないでいてくれている。
なんとかそこまでたどり着く。
しばしテーブルにもたれかかるようにして休憩をする。
これ多分ハンガーノックだ。
なにか食べないと。
こんなところでリタイアなんて絶対に嫌だ。
ゴールまであと2kmくらいしかないんだぞ。
そこで、ひたすら食べまくる。
俵状の小さいおにぎりを少しずつ、でも大量に食べる。多分10個は食べました。
炭水化物チャージ!
短冊切りのレモンを20個くらい噛み付いて、果汁を吸って、すてる。
クエン酸チャージ!
オレンジも同じように20個くらい噛み付いて、果汁を吸って、すてる。
ビタミンチャージ!
皮は胃が消化できないのでもったいない食べ方で申し訳ないけど。
そして小さなチョコレートを10個位口に入れる。
糖分チャージ!
そのエイドにあとで時間をみると20分ほどいたようでした。
残り2kmでなぜか大量にエイドを食べるランナーにきっと中学生たちもびびったでしょうね。
なんでこのひと最後にこんなに大量にエイド食べてるんだろうって。
そこで落ち着いて20分ほど補給をし、ようやく頭と体にエネルギーが補充された感じがしました。
歩きだします。
なんとか歩けそうだ。
少し行くと脚に力も戻ってきた。
ペースは遅いけど走れる。
頑張れる。
まだ走れる。
走ってゴールしたい。
ラスト1kmの看板が見えた。
沿道に人が増えてきた。
「おかえりなさい!!」
そんな声援が聞こえる。
帰ってきた。
1年前には見ることができなかったゴールだ。
ゴールゲートをくぐった。
100km。
ようやくたどり着いた。
ゴールタイム 11:04:00(ネットタイム11:02:09)
最後のエイドでの滞在がなければ11時間は余裕で切れていたなと思いますが、十分満足行く結果です。
準備の大切さ、ワッカの恐ろしさ、補給の怖さ、100kmを完走するにはレースマネジメントが本当に重要なんだなと身をもって知った大会になりました。
あ、そういえばエネモチ食べるの忘れてた。。。
そしてワッカは今年も翌日快晴だったそうです。。。
股ズレに悩む男性向け最強パンツ
私の勝負パンツ(笑)を公開。
MY PAKAGEというパンツなのですが、これ本当に股ズレしないです。
マラソンやトレランでずっと股擦れに悩んできたのですが、これに出会ってからは股擦れしなくなりました。
体験レポートをまとめていますので、お悩みの方はぜひ読んでみてください。
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